2月16, 2024
スイッチサイエンスが「hacomono」のIoT QRリーダーの開発に協力し、その成果が24時間無人運営の「chocoZAP」約1000店舗に展開されました。この記事では、スイッチサイエンスが果たした役割やプロジェクトの舞台裏に潜むエピソードをご紹介します。また、株式会社hacomonoの岩貞氏とスイッチサイエンスの九頭龍による対談形式のインタビューを通じて、スタートアップhacomonoの挑戦と、その夢を支えるスイッチサイエンスとの信頼関係に焦点を当てます。
■株式会社スイッチサイエンス/取締役
九頭龍 雄一郎
1978年東京都生まれ、IoTのプロフェッショナル。シリコンバレーのスタートアップから日本の大企業まで幅広い経験をもつ。2019年に株式会社スイッチサイエンスの取締役に就任。IoT受託開発事業と、ハードウェア開発部門の統括を担当している。しかし根っこは単なる『tech geek』で、自作が大好き。常にテクノロジーで何かを便利にしたり楽しくしたりすることばかり考えている、4児の父。
■株式会社hacomono/IoT開発マネージャー
岩貞 智
1987年大阪生まれ大阪育ち、IoTエンジニア。大阪の組込みソフトウェア会社で経験を積んだ後、2021年にウェルネステックSaaS企業の株式会社hacomonoにJoinしIoT事業の立ち上げを担当。ハードウェアを通してウェルネス産業のDXを推進する。スイッチサイエンスの商品は昔から好きで、特にM5Stackシリーズはお気に入り。過去にM5Stackを使った記事をCQ出版社のInterfaceに寄稿なども行う。2児の父。
hacomonoの課題と、共感したスイッチサイエンスの役割
― まずはプロジェクトの背景となるhacomono社の活動について教えていただけますか?
岩貞:「hacomono」は、2019年3月にスタートし、主にフィットネスの分野で店舗オーナーに対して予約管理や顧客管理などのサービスを提供しています。スタジオレッスンの予約においては、その利便性が高く評価され、成功を収めてきました。
ただ、「hacomono」は予約管理や顧客管理に留まらず、店舗全体の雰囲気や体験を変えていきたいという想いがあります。CEOはもちろん、チーム全体が共有する使命感として、オフラインの入退館やフィットネス機器の連携など、様々な要素にアプローチし、より価値あるソリューションを提供したいというのが根底にありますね。
― すでに入退館管理システムは店舗で稼働していたわけですが、なぜ新たにIoT製品の開発に着手することになったのでしょうか?
岩貞:もともとは既存製品を使っていました。スマホアプリでBluetoothを介して開錠する仕組みで、製品自体は特に問題はなかったのですが、提供しているサービスの中であまりうまく機能しなかったんです。特に業界特有の利用方法としてスタジオレッスンなどがあるのですが、3〜40人のお客さんが一斉に無線で開錠しようとして接続エラーが頻発しました。当然ながらお客さんは混乱するし、店舗スタッフは対応に追われるしで、スタッフレスにするためのシステムが本末転倒な状態になってしまいました。こうしたトラブルがきっかけで、各種問題を解決する新しいIoT製品の開発プロジェクトがスタートしたわけです。
― その後、スイッチサイエンスに相談してくださったわけですが、スイッチサイエンスを選ばれた理由をお聞かせください。
岩貞:その後PoC(Proof of Concept)を実施したところ試作機の評価も上々で、お客様にも喜んでいただけたんです。その結果、このソリューションは有用だという自信を持ちました。で、製品の方針はもう固まっていたので量産のフェーズに移ったんですが、これが大きな壁でした。当時のIoTチームは私一人で、しかも私はハードウェアエンジニアではなくファームウェア専門。量産に関する知識が足りなかったので、外部に頼むしかなかったんです。
いくつかの提携先を相談及び検討した結果、最終的にスイッチサイエンスが一番合っていると感じ、依頼させていただきました。試作機で使っていたRaspberry Piをそのまま量産品に使うアイデアを提案して、手戻りを最小限に抑えつつ、スムーズな進捗を目指したんです。スイッチサイエンスにはRaspberry Piなどの効率的な調達や、それらを使った量産に関するノウハウがあるだろうことも期待していました。
実は私自身が、ハードウェアにあまり詳しくないこともあり、量産の工程も経験がないので技術的なサポートが必要だと感じていたため、技術顧問も一緒に探していたんです。その中で、スイッチサイエンスには技術的なサポートができるという九頭龍さんがいることも、最終的な決め手となりました。
― スイッチサイエンスは、hacomonoさんのプロジェクトに参画する決断をします。そこについて決め手のようなものがあれば教えてください。
九頭龍:まず、スイッチサイエンスは基本的にプロジェクトへの参画を断ることがほとんどないです(笑)。 特に岩貞さんみたいなスイッチサイエンスのユーザーさんが相談に来てくださったら、それはもうぜひ力になりたいと思いますよ。
その上でお受けすることにした理由は、岩貞さんが提案されたRaspberry Piをそのまま使用したソリューションが、スイッチサイエンスにとっても開発負荷が低かったことです。 それに、ビジネスの観点で言うと、スイッチサイエンスはやはり量産に進むプロジェクトに参加したいんですよね。 でも世の中、PoCで終わってしまうプロジェクトがあまりにも多い。 難易度が高く費用がかさむプロジェクトであればあるほど、PoCで終わってしまうというのが傾向としてあります。だけどhacomonoさんはコンパクトなアプローチでプロジェクトを進めていて、これはスムーズに量産に進む可能性があるなって思ったのは確かだったし、実際その通りの進展があったことは本当に良かったと思います。
― プロジェクトの始まりの部分を伺います。どのようなチーム構成だったんでしょうか?
岩貞:簡単に言うと、僕がソフトウェアのエンジニアなので、ソフトウェア以外は全部お任せしますみたいな感じでした(笑)
九頭龍:そうですね、最後までうちはファームウェアは一切書いていません。当社側のメンバーはメカニカル担当1人、電気設計担当1人、あとは量産管理が1人、そんな感じの体制でしたよ。超軽量。めちゃくちゃ軽量でした。
― プロジェクトの開発アプローチについて教えてください。
九頭龍:既製品を積極的に活用しようということで、QRリーダーはそのまま、Raspberry Piもそのまま使う方針で進めました。なので当社としては筐体を作る部分と、この(QRリーダー)中に入っているいくつかの中継的な拡張基板の設計を行いましたが、効率よく進めることができたと思います。
岩貞:あまり技術的には面白みはなかったかもしれませんが(笑)、そこに時間をかけるよりは、既存のものを有効活用することで開発スピードを上げたかったというのはありますね。もっと言うと私はソフトウェア出身なので、プロジェクトにかかるコストは最小限でとにかく小さく始めたいんです。ハード屋さんに言ったら怒られるかもしれないけど(笑)だから委託先の選定時、複数社に見積もりを依頼した中で、スイッチサイエンスさんは、方向性を理解した上で我々が想定している見積額を素直に提示してくれたので嬉しかったですね。